「鍬入れ」は地鎮祭のクライマックスであり、建主が実行するものですからその記念すべき勇姿をベストな位置から写真に納めたいと思いますよね。
しかし、ベストショットを撮りたいからといってしめ縄で囲んである中にズカズカと入ってはいけません。なぜならそこは神様の居場所(聖域)だからです。たと-え短い時間であっても神様がいらっしゃる神聖な場所に足を踏み入れてはいけないのです。
しめ縄の周りなど神様の場所以外のところから撮影しましょう。
幕にはよく知られている紅白幕以外に、青白幕、鯨幕(くじらまく。白黒幕のこと)があります。さて、地鎮祭で使うのはどの幕かご存知でしょうか。
答えは紅白幕と青白幕の両方です。
地鎮祭は神様をお呼びして安全祈願をする神事ですね。神様と我々人-々が同時に集う行事です。そのため人々に対しては庶民的な紅白幕を、神様に対しては青白幕を使うのです。どちらか一方ではなく、両方を使わなければいけません。
実は、もともとは青白幕ではなく鯨幕を使用していました。しかし白黒の鯨幕は葬儀の時に使われるイメージが大変強くなったため、鯨幕ではなく紫白幕が使われるようになり、時代の流れとともに次第に紫白幕ではなく青白幕が使われるようになって現在に至ります。
このように鯨幕は本来弔事用の幕という意味合いはなく、現在においても慶事で使用してもよいものとされています。しかし今では慶事で使われることはほとんどありません。
けれども最も格式の高い正式な儀式では今でも鯨幕が使われます。例えば現在の天皇の即位礼に際して行われた「賢所大前の儀(かしどころおおまえのぎ)」では鯨幕が使われました。
ですから地鎮祭に紅白幕と鯨幕を使用しても実は何ら問題ありません。むしろその方が本来の形と言えるかもしれませんね。
ズバリ、神事に人工のものは使いません。例えば、腐るからといってお供物を人工のもので済ませますか?神様に対して偽物を使うことは言語道断だと言えますね。
売っている人工の竹は、地鎮祭などの神事のためのものではなく、インテリア用として売られているものです。
地鎮祭の参加者がそれほど多くない場合でも参加者が座る椅子は必要でしょうか?
はい、必要です。なぜなら立ったままだと神様を見下ろす状態になるからですね。
神社では神様はそもそも高いところにいらっしゃいますが、地鎮祭では参加者とほぼ同じ高さになります。ですから座ることで人間は神様よりも低いところに位置し神様を敬う気持ちを表すのです。費用を安く済ませたいからと言って神様を見下ろすような状況を作るのは避けたいですね。
神社に参拝する時などに行う手水。地鎮祭でも最初に手水で手を清めます。
さて、地鎮祭は時には冬の寒さ厳しい日に行われることもあるでしょう。そんな時、来客の方のためにも手水はお湯にしてさしあげたいと思うのは人情かもしれません。
しかし、神事において手水にお湯を使うという発想はそもそもありません。初詣の時に手水がお湯になっている神社があるでしょうか?
自らを清める手水はいかなる時も手を加えない通常の水を使用します。
令和2年12月 藤原 宣雄