今回は地鎮祭で行われる「鍬入れの儀」の説明をしましょう。
「鍬入れの儀」には、①鎌(かま)、②鍬(くわ)、③鎮物(しずめもの)、④鋤(すき)の4つの動作があり、正式にはそれぞれ①「刈初の儀(かりぞめのぎ)」、②「穿初の儀(うがちぞめのぎ)」、③「鎮物埋納の儀(しずめものまいのうのぎ)」、④「鋤取の儀(すきとりのぎ)」と言います。
それでは「鍬入れの儀」をより正しく理解するために、これから家を建てるまでの工程を想像しながら順番に見ていきましょう。
① まずはじめに木や草を取り除いて整地します。
② 基礎工事のために土を掘ります。
③ 掘り終わったら鎮物を納めます。
④ 鎮物を埋めます。
これらが家を建てる前までの準備段階の作業ですね。
「鍬入れの儀」はこの4つの作業を順番通りに簡潔に表現していく儀式です。地を鎮め安全祈願を行う地鎮祭のクライマックスであり一番のメインイベントなのです。
鍬入れの儀を行うために「盛砂(もりずな)」が設置されます。盛砂とは、砂を円錐形または台形に盛ったもので、通常その天辺に萱(かや)の葉を立てます。
整地するという意味を表し、鎌で盛砂の天辺に立てられた萱の葉を刈る動作をします。
基礎工事をするために土を掘ることを表す動作をします。鍬で盛砂を掘ります。掘るのは少しで良いです。
鎮物を埋納することを表す作法です。鎮物とは土地を鎮めるための物という意味があり、通常その時代の物を納めます。鎮物は神主によって行われます。
鎮物を埋めることを意味する作法です。鋤で鎮物に軽く盛砂をかける動作をします。
この鎌、鍬、鋤を行うときの作法として必ず左、右、真ん中の順で行います。
これは天、地、人の神様を意味し、それぞれの神様にお願いをするという意味合いがあります。
この時に「エイ」などと掛け声をかけますが、家が繁栄するように、栄えるようにと声をかけるものであり、決して勝どきの掛け声でも、気合いを入れる掛け声でもありません。ですから大きな声で「エイエイオー」などというのはおかしいですね。
地鎮祭はこれから行う建設作業においての安全祈願であり、建主および施工店、設計会社の共同作業です。ですから「鍬入れの儀」においては、「鎌」は設計会社、「鍬」は建主、「鋤」は施工店が行います。ただし設計会社と施工店が同じ会社の場合は鎌を省くことが多いようです。
以上が「鍬入れの儀」であり、地鎮祭におけるメインの地鎮行事です。
次回は地鎮祭で行う「四方祓の儀(しほうばらいのぎ)」について説明しましょう。
令和2年9月 藤原 宣雄